美容室の労働時間管理 ~固定残業代導入のメリット~

前回のブログで美容室の現実的な労働時間を勘案し、固定残業代導入の提案をしました。

(前回のブログはこちら)

https://ochiai-sr.com/blog/2022/05/25/%e7%be%8e%e5%ae%b9%e5%ae%a4%e3%81%ae%e5%8a%b4%e5%83%8d%e6%99%82%e9%96%93%e7%ae%a1%e7%90%86%e3%80%80%ef%bd%9e%e5%9b%ba%e5%ae%9a%e6%ae%8b%e6%a5%ad%e4%bb%a3%e5%b0%8e%e5%85%a5%e3%81%ae%e6%8f%90%e6%a1%88/

固定残業代は一定時間の残業代を決め、毎月定額で支払うものとなります。

仮に一定時間を30時間とすると、時間単価(時給)×30時間×1.25倍を支払います。

実際の労働時間が30時間に達しなくても定額を払い、逆に30時間を超えたら、その分を別途支払います。

ナンか、

「30時間に達しなくても定額を払い、逆に30時間を超えたら、その分を別途支払うのなら、意味無いのでは?」

「実際の残業時間分をそのまま支払えば良いのでは?」

なんて声が聞こえてきそうです…

ここでまず、固定残業代を導入するメリットを書きます。

1. 就業規則に規定することにより、未払い残業代のリスクが減る

2. 同じ月額給与であれば時間単価(時給)が低くなるため、残業代の金額も低くなる

3. 月額給与は基本給+固定残業代なので、求人募集時に大きなアピールになる

もう少し詳しく見ていきましょう。

1. 就業規則に規定することにより、未払い残業代のリスクが減る

労働時間を正しく管理しておらず、そのため(正しい)残業代も支払っていなかった美容室は要注意です。

稀かもしれませんが、退職時にスタッフから過去の残業代を請求されるケースもあります。

「掃除や練習の時間も込みの給料だった」と言っても、就業規則に書かれていなければ主張としては厳しいものになってしまいます。

本来であれば「給料には○時間分の残業代が含まれており、その計算式はこうなっている」と規定しなければなりません。

未払い残業代は過去に遡って支払うこともあり、その場合は莫大な金額になってしまいます。

美容室としては、絶対に避けたい事案です。

2. 同じ月額給与であれば時間単価(時給)が低くなるため、残業代の金額も低くなる

例えば、月額給与240,000円のケースで考えてみます。

ここでは簡易的に1か月の労働時間を160時間(1日8時間×20日)とします。

通常の時間単価(時給)は、240,000円÷160時間で1,500円になります。

仮に240,000円に30時間分の固定残業代は含まれていたとしたら、240,000÷(160時間+30時間×1.25)で約1,215円になります。

1,500円と1,215円で、285円もの差があります。

30時間を超えた残業時間は別途支払う必要がありますが、1時間あたりで約356円(285円×1.25)差になるのです。

3. 月額給与は基本給+固定残業代なので、求人募集時に大きなアピールになる

2. と同様に、月額給与240,000円のケースで考えてみます。

今回は240,000円にプラスして固定残業代を払うとすると、240,000円+1,500×1.25×30時間で296,250円になります。

固定残業代は必ず支払うので、求人募集時に296,250円を提示できるわけです(「固定残業代56,250円込み」と表記する必要があります)。

240,000円で別途30時間分の残業代を支払うのであれば、最初から固定残業代として、それと合わせて296,250円とすべきですよね。

いかがでしょうか。

どのスタッフも確実に30時間の残業があるのであれば、固定残業代とするのは大きなメリットであると思われます。

実際に導入するとなると、現状より不利益変更はできないので色々と検討すべきことがありますが、それでも一考する価値はあると感じます。

最後にデメリットも書いておきます。

仮に残業するスタッフと残業しないスタッフがいる場合、働かない(残業しない)ほうが得となってしまうことです。

30時間残業したスタッフと全く残業しないスタッフの月額給与が同じなので、頑張ったほうが働き損みたいになってしまうからです。

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